展示会の風景 その2
娘のにこがピアノを始めたのは6歳から。
保育園がもうすぐ卒園というタイミングで始めたと思う。
にこがピアノをしたいというのは愛子さんから聞いて知ったけど、確かコンクールに出てみたいというのが動機だったと記憶している。園にもピアノをやってる友達とかいて、影響されたんだと思う。
僕はあんまり乗り気じゃなかった。どうせすぐ飽きると思ったけど、まぁ本人がやりたいのならやってみれば?という感じだった。
tu.tuに髪を切りにいった時、お兄さんに相談してみた。tu.tu兄の娘さんもピアノをやっていたからだ。すると我が家のすぐ近所の教室を紹介してくれた。
それからにこは約1年、長船の教室に通っていた。
ピアノの先生が古いキーボードを貸してくれたけど、家ではほとんど練習してなかったから、正直、どのくらいの本気度でやってるのかはわからなかった。しかし念願の発表会にも出れて、片手だけどちゃんと「キラキラ星」を演奏していた。
高梁に来て市役所の仕事を紹介してもらった後、ピアノ教室を探した。ここでもピアノが続けられればと思ったからだ。
教室はあっさり見つかって、にこはまた通い始めた。先生は僕よりもずっと若い先生だったけど、にことの相性は良さそうだった。
初めのうち、練習しているところを見てみたけど、30分はあっという間だった。
これで上達するのかな?でもにこのリズム感はとてもよかった。
問題はピアノが家にない事だった。先生もそこを心配していた。この先の練習はやっぱりピアノがあった方がいいとの事だった。
本物はちょっと尻込みしたので、電子ピアノや、レンタルをネットで探したりした。
本物のピアノと電子ピアノだと弾いた感じはどれくらい違うんだろう。
どのメーカーがいいんだろう。
さっぱり解らなかった。
ところがそのピアノもあっさり家にやってきた。本当はあっさりでもないけど。
親戚のおばさんが使ってない古いピアノを譲ってくれたのだ。問題となる運搬も、長船の先生が業者を紹介してくれてトントン拍子でピアノが高梁に来る事になった。
お義父さんはこのピアノのために部屋を1つ空けてくれた。2重張りのしっかりした床の部屋にピアノが来た。
山の上まで運べず、配達屋が2人掛かりで担いで運んだそうだ。
いちばん喜んでいたのは末っ子のたま子だったけど、僕自身そこにピアノがあるという事に感動した。
しばらくするとスーツを着た調律師さんがやってきた。
愛子さんの話によると、優しそうなこの調律師さんは、この古いピアノを『奇跡のピアノ』と呼び、意気揚々と修理・調律してくれたという。
何回か修理・調律をした後、古いピアノは甦った。
ピアノの弾けない自分でも、生のピアノの音は素晴らしかった。
そのピアノをにこが弾いた時、僕は驚いた。『両手で弾いとる!』
にこはいつの間にか両手でピアノを弾けるようになっていた。楽譜をめくって「これも弾いて、あれも弾いて」とリクエストするとにこはすらすら弾く。
すごいとしか言えなかった。
なんか色んな人に感謝したくなった。それ以来、にこのピアノを聴くのが楽しみになった。
今回、この調律師さんが展示会に来場。
じっくりイラストを眺め、カレンダーをつれて帰ってくれた。
調律師さん。ありがとうございました。