雑記(昔買ったCDとかの話)
中学生の頃、受験勉強をしながらラジオを聞いていた。
その中でもハマっていたのが、「クロスオーバー・イレブン」という番組だった。
津嘉山 正種さんの渋い声で、何かの物語やエッセイが朗々と読まれ、その合間に洋楽が流れる。
ある日は短い小説。ある日は怪談。ある日は海外の物語。
その音源をカセットテープに録音して、枕元で何度も流しながら寝ていた。
その番組を聴いている間は、別の世界に入り込んでいるような気分がした。
合間に流れる洋楽がまた良くて、自分が味わっている別世界気分を引き立ててくれた。
番組の最後には流れた曲が紹介される。その曲をメモしてタワーレコードに買いに行った。
その頃は、タワーレコードは駅前のビルの4階にしかなくて、エスカレーターで上がった4階のフロアがすべてタワーレコードだった。
GLAYやB’zとかが何百万枚もCDを売り上げていた時代で、まさにCDの黄金時代だった。
しかし、その当時のタワーレコードは、そういったメジャーなJ-popもさることながら、今と比べて圧倒的に洋楽やインディーズの音源が充実していたような気がする。
世界中の音楽が置いてあるんじゃないかというくらいに思っていた。
クロスオーバー・イレブンで流れていた洋楽も大抵見つかった。
しかし、おかしなもので、そこで見つけたお目当ての曲も、帰って聴いてみるとなんか違うのである。
間違いなくラジオで紹介されてた曲なのに、あの別世界感が味わえないのだ。
大人になっても、曲を購入するきっかけは、だいたいラジオだ。
そこでふっと流れた曲に惹かれて買うことが多い。
買った曲はもちろん、いい曲だし、何度も聴くんだけど、やはり最初に出会ったときの「おおっ!」という感覚が得られないことが多い。逆に、そのアーティストの別の曲の中にもっと良いものを見つけることもある。
人間というものは欲しいものがあっても、手に入れてしまうと欲しかったときの感覚がなくなるのかもしれない。
今日、作業部屋で製本の仕事をしていた時、久しぶりにyou tubeでみうらじゅん氏の過去音源を聴いた。
その中に、世の中にあまり知られていない曲をラジオのテーマに合わせて流すというものがあった。
何年か前に、よく聴いていた音源だ。
その中には、みうら氏自身が歌っている自主制作の曲などもあり、みうら氏はやや自嘲気味に紹介するのだが、
僕はその曲がとても斬新に感じられて、何度も聴いた。
僕の数多い(叶う予定がない)夢の中に、高杉晋作および長州藩のことを300億円くらいかけて映画にするというものがあるけど、
みうら氏の「KUMBHIRA-SHIPS」という曲を主題歌にしたいと思った。
今日、you tubeでその音源を聴いたら、肝心の「KUMBHIRA-SHIPS」の部分が破損しているのか、聴こえなくなっていた。
もしかしたら、今後2度と聴けないかもしれないという事で、少しショックだった。
でも、2度と聴けないからこそ、良いのかもしれない。
KUMBHIRA-SHIPSのCDをたとえ手に入れたとしても、クロスオーバー・イレブンの時と同じで、最初に聴いた輝きのような感じは得られず、どんどん褪せていくだろう。
楽しい思い出も、思い出だから良いのであって、それがメディア保存して再生などできるようになったら、途端に輝きを失うんだろうな。