ホステル(映画のはなし)

僕はホラー映画が怖くて観られなかった。
その価値観を変えられたのがイーライ・ロス監督の作品『ホステル』だ。
この作品によってホラー映画がはじめて面白いと思えた。
それだけでなく、演出や物語の構造についても考えさせられた。
とにかく、ホステル以降で映画自体の見方が変わった。

この作品には怖いシーンがけっこうあるけど、僕が凄いと思ったのは、それが単に映像の怖さだけでなく、その裏の演出が効いてるという事に気づいたときだった。

そもそもなんでホラー映画は怖いのか。
モンスターが出るから?悪霊が出るから?グロテスクな表現だから?
もちろんそれもあるけど、僕はその出てくる奴らの正体がわからないからだと思う。
わからない奴がいきなり現れたり、追いかけてくるから怖いのだ。

ホステルでは、この「わからない」という感覚を巧みな演出によって刺激してくる。
姿が見えない。足音が聞こえない。相手の正体・目的がわからない。
そもそも、なんでこんな目に遭うのかわからない。
これらがカメラワークや音、話の組み立て方によって増幅され、観る人の神経・心理を責め立ててくる。
ものすごい怖い。
そして、映画中盤以降でこの「わからないやつら」の正体が「わかる」のである。
そこで、演出がガラッと変わる。
やってることの凄惨さは同じなのに、今まで神経に突き刺さるような怖さだったものが、まるでスポーツのような爽快感に変わるのだ。
「おんなじ殺しが演出1つでこんなに変わるのか!」と驚いた。
これは、「怖い」と「笑い」が紙一重であるという点を巧みにとらえている結果ではないかと思う。
ハリセンで頭をはたけば笑いになるけど、トンカチではたいて血が出るとホラーになる。
そして「わからない」という恐怖の正体は、わかってしまえば薄っぺらなものだったりする。
そういった面白さをホステルから学んだ。

それだけでなく、イーライ・ロスの映画は物語の構造がとてもきちんとしている。
誰が主人公で、なんの物語なのか。話はどこへ進んでいるのか。といった基礎の部分が実はとてもしっかりしていて、観たあとで記憶喪失に陥らない。
序盤、中盤、終盤と展開していく構造もとてもテンポがいいし、無駄なシーンがない。
やってる事はホラー映画なんだけど、その中身は伝統的なおとぎ話のようなオーソドックスなスタイルを持っている。

いつかイーライ・ロスの新作をスクリーンで観てみたい。


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