ゴールデン・リバーを観て

ーあらすじ
原題は「SISTERS BROTHERS」という西部劇。
日本語にすると「姉妹兄弟」という通り名であるこのシスターズ兄弟は、ヤクザに飼われている「殺し屋」であり、その腕は超一流。
仕事を終えて帰ってきたシスターズ兄弟は、親分からまた新しい指令を受ける。
世の中はゴールドラッシュであり、あちこちで一獲千金を狙って人々が旅をしている。
そんな中、確実に金を採掘できる方法を知っている男がいた。
シスターズ兄弟の次の指令は、その男を捕まえることだった。
しかし、この指令が兄弟の運命を大きく変えてしまうことになっていく。

ー感想
Netflixで鑑賞。
ずっと前にダウンロードしただけだったものを、ちゃんと観ることができた。
今まで観たいくつかの西部劇で共通しているテーマは「孤独と悲哀」だ。
これを西部劇に持ち込んだのはクリント・イーストウッドらしい。
「許されざる者」でイーストウッドが描いたのは、それまでの勧善懲悪の西部劇ではなく、人の命の重さと責任だった。
そこに、かっこいいガンマンの姿はなく、なぜ人を殺すのか。命を奪うとはどういうことなのかを、イーストウッドが背中で語るという、印象的な映画だった。
また、昔テレビで観た「デンバーに死す時」というマフィアものの映画では、一見「かっこいい悪」のように描かれている主人公一味が、ちょっとした出来事がきっかけで何もかもが破綻していくという、マフィアならではの儚さが描かれていた。

このお話には、その両方を感じた。
しかし、この映画にはもう1つの魅力がある。「爽やかさ」だ。
物語の主人公であるお兄ちゃんの佇まいが、この孤独ではかない物語に「爽やかさ」を添えている。
お兄ちゃんは殺し屋をやりながら、この仕事に限界を感じている。
本当はお兄ちゃんは命の重さについて考えている。自分の命、人の命、愛する弟の命。
弟は考えてない。
弟は結果しか求めないが、お兄ちゃんは過程を重んじ、未来のことを考える。
そんな兄弟が追いかけているターゲットの男も、命に対して平等な思想を持っており、理想社会の実現を夢見ている。
この「平等な男」を追跡していた、シスターズ兄弟のもう1人の仲間は、その平等性に感化されていくのである。
お兄ちゃんは、この「平等な男」に出会うことで、自分の求めていたものを確信していく。
お兄ちゃんが求めているのは安息と平穏である。
愛する弟に、この安息と平穏を理解してもらうことはできるのか。
しかし、ある事件がきっかけで、この4人の運命は大きく変化していく。
シスターズ兄弟はこの事件を通して、自分たちの人生を見つめ直し、新しい道を歩み始める。
それは一体どんな選択だったのか。ここがこの映画の最大のメッセージであり、面白さであると思った。




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