過去帳

1、2年前から相談だけ受けていた製本の仕事が急に決まった。
とあるお寺の過去帳制作である。

以前、クライアントが持参した過去帳の見本は、四つ目綴じで作られており、表紙の紙には柿渋染のような紙が使われていた。

この紙が何なのかはよくわからない。クライアントの話では、多少違っていてもいいから、だいたいこの見本と同じようなものを製本してほしいとのことだった。
この見本自体が昔の作ったものであるため、どこで印刷したのか。どこで製本したのかも何も分からないということだった。

問題は中身である。小口側に大きく染みがある。
この染みは、保存の問題ではなく、意図的にやったものらしい。最初、これも再現してくれと頼まれたが、これに関しては無理なので断った。

今回の制作は、印刷会社さんと製本会社さんに協力してもらった。
表紙の紙は、わがみやうめださんに依頼。

本文の印刷は、薄い奉書紙にスミ1色刷りで、1冊100枚綴りが10冊で、予備も考えて1500枚程度だ。
こういった小ロットで、しかも薄い紙に印刷するのが得意そうな印刷所は伸輝印刷さんではないかと思い、印刷を発注した。
伸輝印刷さんは小規模ではあるが、職人型の印刷所なので信頼できるし、こちらが分からない事は何でも教えてくれる。間違いのない印刷をしなければならない時は心強い。

これが伸輝印刷さんで刷ってもらった本文だ。紙の取り都合でこちらがミスをしてしまったけど、柔軟に対応してくださり、予備も十分に確保できた。

単純な印刷だけど、細かい検品(2枚取りがないか、かすれなどがないか)が為されている。印刷会社は、検品に関してシビアだ。こちらが気づかない些細な事でも見逃さない。ほんのちょっとの事でとんでもないクレームを受ける事もあるからだ。非常に美しい仕上り。

ここから製本に入っていく。
中身の制作は津本製本さんに発注した。この部分は、多少、機械の力が必要になるのである。
津本さんは僕が製本会社にいた頃からずっとお世話になっている先輩だ。仕事が早く、間違いがない。
何より、こちらのズボラな依頼に対していつも気持ちよく引き受けてくれる。
今回は100枚綴りなので、束が厚くなる。そのため、綴じ穴まで図々しく依頼した。
たった1日で全部やってくれた。
最高の仕上がり。これだけ良い仕上りなら、後工程は何の苦労もなく進められる。
しばらく見とれる。


ここから仕上げは、2つボタン製本部の仕事。

まず角布を貼る。うめださんに仕立ててもらった柿渋和紙から表紙を取り、残った端切れで角を貼る。

続いて表紙を貼る。
うめださんの美しい柿渋和紙を丁寧に貼る。見本と違うけど、文句はないはずだ。

糸で綴じて完成。
綴じ糸は愛子さんが吟味して取り寄せてくれた。あまり細いと糸がすぐ切れるので、多少太い糸にした。
綴じはすべて愛子さんの仕事。

うめださんの柿渋和紙。
手染めのため、取った場所によって味わいが違う。そういった良さをどれだけ分かってもらえるのか知らないけど、本が旅立つ前に写真に納めておこう。

角の違い。
新しい方がかっこいいと思うけど、いかがでしょうか。


いってらっしゃい。

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